《MUMEI》

ヤツとオレは、日比谷線改札2コーナーをターンしながら、連なるように下りエスカレーターへとアプローチしてゆく。


心の声「糞っ!ミヒャエル〜!

ゆっくり歩いてるようにしか見えないのに、なんて速いウォーキングなんだ!?」


オレは最強の乗り換えレーサーの速さに舌を巻きながら、エスカレーターのステップを目視しようと、ヤツの足元を睨んだ。



その時…


――…"ゆっくり歩く"…?


オレの思考は、ヤツの歩調を見て一瞬フリーズする…。


そして、その意味を頭の中で反芻したとき、オレは認めなくない現実に愕然となった…。

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