貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
レーダー。
「欲しかったです。苦手なタワレコに足を踏み入れなければならないほど」

わたしは堰を切った様に、いろんなことを話した。


タワレコが苦手な理由。
どれだけ綿密に計画してたか。
家族のこと。
自分のこと。
それと、感謝してること。


何故かは分からないけれど、思ったことが次々に口から溢れて止まらなかった。


彼女は静かに聞いて居てくれた。
たまに相槌をうちながら、でも、一言も口を挟まなかった。



「…本当にありがとう」

全てを云い切った時には、わたしは汗だくで、ちょっとだけ涙ぐんでた。



「お疲れさん」
彼女が口を開く。


「初めて会ったあたしに話さなきゃならない程、あんたは切羽詰まってたんだね」

「あ…」

「スッキリしたでしょ?」

「はい…」


本当にスッキリした。
あんまり友達の居ないわたしは、どうしても悩みや愚痴を抱え込みがちで、これといった趣味もないから発散も出来なかった。

きっと、彼女が「知らない人」だから話せたんだろう。


「でさ」

「え?」

「お礼は?」

「……あ」


わたしは急いでカバンから財布を取り出した。

「…あ、あー、お金じゃないの」

「え?」

「それ」


彼女が指差したのは、財布を出す前にテーブルに置いた携帯電話。


「あたし友達居ないんだよねー♪」


ニヤリと笑って彼女は続けた。


「メアド教えて?」

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