《MUMEI》 ゆったりとした小川の流れは濃紺に深く…空には煌めく金平糖のような星と まるでひと月の円を描くような 微笑みかける月たちが…一コマ…一コマとその像(カタチ)を変えながら…見守っている… そこは…碧い静かな三日月の夜だった 。 小舟に揺れるその宏介と通称ビルも…碧い月明かりの下… 時折小川を奔る魚たちの銀色や金色の線に照らされて……深く静かに輝いていた 。 「その預けられた親戚ってのはよ…… まぁ…九ちゃんの親父の兄貴だったんだがな… そのオヤジさんてのは…気の小さいやさしい人だったんだが… ばばあの方が…ホレォ また欲道モンできつかったんだわサ…… そこにゃ…一人息子がいたんだが…コトあるごとに 差をつけられてよ…… さすがに九ちゃんも耐えかねて 家出しちまったんだがや…十才の時によ … まぁすぐにとっ捕まったがな……ははぁ(笑)… でな……見かねた 叔母が九坊を また引き取ったって事さな…… その叔母ってのは…九ちゃんの親父の妹だったんだが… 旦那との間に子供がいなかったんだべな … …で …九坊… 今度はけっこう可愛いがられたんだかな……ちょいとうるさかったんだよ…そこの旦那がよ……」 栄一は…小さく七色に輝く夜空の金平糖や… ゆるりと流れる小川の上…沈んではまたポッカリと浮かぶ…を繰り返す小さな河童の皿を見つめ… ビルの話しを黙って聞いていたが … 「…うるさかった ?ナニが?… 」 …淡い光りの群れを浴びながら…珍しく黙々と話しをする通称ビルに口を挟んだ… 「ダカラ〜〜そこの旦那がだよォ… お役人だったそこのオヤジさんはな……引き取った九坊に勉強…勉強…また勉強ォ と、きたもんだォ はははぁ〜 (笑) 通称ビルの…あの汚らしい(笑)い声は 健在だった 。 前へ |次へ |
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