《MUMEI》

「‥ごめん、先生」

「?」

「いきなりキレたりして‥」

ごめん、

もう一度そう言いかけたら。

「いいっていいって」

ポンッと、

あたしの頭に手を乗せて。

宝物を見つけた、

子どもみたいな笑顔で。

先生はあたしに、

そう言った。

「あんまりさ、気落ちしなくていいからな?」

「──何で怒んないの‥?」

それが、

気になった。

先生は、

あたしが勝手にキレて、

飛び出して行ったのに‥

全然、

嫌そうな顔ひとつしない。

「何で──怒んないの?」

訊いたら、

先生は笑い出した。

「俺が怒る理由、あるか?」

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