貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
解雇
「ふぁ〜あ」
欠伸をしながら散歩をする。
季節は春。散歩をするには良い季節だ。
オレの名前は河合智也。19歳のフリーターだ。
(いや、ニートか…)
その理由は1時間前にさかのぼる…

「はぁ〜〜、腹減った〜〜。」
オレは某有名ハンバーガー店でバイトをしていた。空腹で。
(暇だ〜。)
暇つぶしにレタスを油で揚げてみる。
「智也さん〜、ちゃんと仕事しましょうよ〜。」
この可愛らしい声の持ち主は、レジの水原奈々ちゃんだ。高校に通いながらバイトをする、真面目な良い子である。
「仕事つったって客は来ないしな〜。」
店内を見回す。ものの見事に誰もいない。昼前のこの時間はいつもこんな感じだ。
「それはそうですけど…」
「それに、今日は朝飯が食えなかったんだよ。」
「そうなんですか?」
「家に食料がなにも無くてな。ちなみに金もない。」
「た、大変ですね。」
奈々ちゃんは苦笑しながら応える。
「だから奈々ちゃん!これは見逃してくれ!」
「へ?」
振り向いた彼女が見たのは、3段重ねの豪華バーガーをむさぼるオレの姿だった。
「うめぇ〜!」
原価だけでも500円はしそうな代物だ。当たり前といえば当たり前である。

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