《MUMEI》
メロメロ
明枝は腰を浮かしてのけ反った。
「やめてください、お願いですから!」
「明枝。そこまでよがっちゃったら、女の子として負けじゃん。観念して屈服しちゃいな」
「イヤです。早く止めて!」
まずい。耐えられない。明枝は腰をくねらせた。
「やめて、やめて、一生のお願い…あん」
急所に入ってしまった。明枝は本気で慌てた。
「やああん、一旦待って、一旦待って、あ、くううう……」
どうにもならない。
「トドメ刺してあげるね女の子」
「あああん、やめて、やめてえ!」
明枝が大きい声を出すと、待ってましたとばかり、男は笑顔でスイッチを切った。
「あ、悲鳴上げたね」
明枝は焦った顔で早口に弁解した。
「今のは悲鳴じゃありませんよ。大きい声出してごめんなさい」
しかし男は聞く耳を持たない。
「約束破ったね」
「違います、違います」
「約束破ったら罰ゲームって言ったよね」
男は例の催眠スプレーを出した。
「ジャーン!」
明枝はもがいた。
「まずはお寝んね。次目覚ましたときは廊下だよ」
男がスプレーを口と鼻の前に持ってくる。明枝は赤い顔でひたすら訴えた。
「今のは悲鳴じゃありませんよ。悲鳴っていうのは助けてって、だれかに助けを求めるもので、やめてって言うのは、あなたにお願いしてるわけですから」
「言いたいことはそれだけ。じゃあお休み」
「やめてほしいから必死にお願いしてるんでしょ。やめてくれないから大きい声出しちゃったんだから、あなたが悪いんだよ」
やや目を赤く腫らす明枝。男は片手で彼女の髪をクシャクシャにした。
「かわいい!」
明枝はくやしい表情で横を向く。
「どんなにバカにされても、あたしはあなたにお願いするしかないから」
「バカになんかしてないよ。かわいいって言ってんじゃん」
明枝は一か八か、ムッとした顔で男を睨んだ。
「かわいい。そのかわいさに免じて廊下は勘弁してあげる。俺って優しいだろ?」
「優しいです」
即答するしかない。
「明枝かわいいからメロメロにしてあげるね」
「え?」
不意打ちに高速回転したトゲトゲを秘部に直撃されて、明枝は暴れた。
「あん、やめてよ、いい加減にして!」
無抵抗なのをいいことに、いくら何でもやり過ぎだ。
しかし罵倒でもしたら本当に意地悪されてしまう。
「どうしたら許してくれますか?」
「許すわけないじゃん」
「何で!」
「イカすよ」
「ダメ、それだけはやめて」
明枝が紅潮した顔で哀願する。だがその表情は、男のサディスティックな興奮を刺激するだけだ。
「明枝。メロメロにしてあげる」
「ふざけないで!」
「快感が長く続けば理性が飛んでただの女の子になっちゃうから。明枝。あんあん言わせてあげる」
バカにしている。そんなことされてたまるか!
明枝は唇を噛んで自分を確かに持った。手足を拘束されているから、好きにされてしまうのは仕方ない。
しかしこの邪悪な男に負けてあんあん乱れてしまったら、それは女として情けない。
かといって強い態度は取れない。悔しいけど、この男に許してもらい、最後はほどいてもらわないといけないのだ。
「お願いです、もういいでしょ。十分楽しんだでしょ?」
「こんなのまだ序二段だよ」
笑えない。
「あ、明枝の弱点見つけた」
「え?」
「ここだろ?」
「あん!」
明枝は激しく暴れた。
「やめて、やめて!」
「その慌てぶりはイク寸前?」
明枝は唇を噛んで必死に耐える。
「このまま攻められたらイッちゃう?」
明枝は真っ赤な顔をしてこらえた。
「イッちゃう寸前だということを認めたら許してあげるよ」
明枝は言葉に出すのは悔しいから頷いた。
「かわいい!」
男は約束通り許してくれた。明枝は息づかいが荒い。
打ちのめされたように全身の力が抜けた。しかしまだ危険地帯から逃れたわけではない。
「もういいでしょ。ほどいてください」
「甘ーい!」

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