《MUMEI》
逢瀬
最近のあたしは、水を得た魚のように弾んでいる。

会社でも、若い子に
「河瀬さんなんか良いことでもあったんですかあ〜?」
なんて聞かれて赤面している自分に驚いている。

女子高生みたいな恋に似たこの気持ち。
 旦那と夫婦生活をしていた時ですら、こんな気持ちになった事があっただろうか。
甘くて酸っぱくて、ちょっぴり切ないようなこんな気持ち。

 昨晩、亜紀経由で、悠也から会いたいと連絡があったのだ。

―あの晩から43日経過した夜にあたしの携帯が鳴った。

 孝史からおおまかないきさつを聞いた亜紀は、ここぞとばかりに悠也との成り行きを執拗に聞いてきた。

恥ずかしながらあたしは、白状したのだ。

 悠也とは、携帯の番号もアドレスも聞かずにあのままだった。
体から入った関係に恋もクソもないもんだがあたしの脳内は、すでに脚色されていて、辺りが全てピンク色に見える程だ。

 莫迦だ。イカれてる。
向こうは、割り切った遊びなのだ。7歳年上の女なんか恋愛対象になんかならない。
若い子の方が肌の綺麗だし、可愛い。

 
そんな事は、百の承知だ。

 

好きな時に快楽をむさぼって、時々甘えて小遣いなんかをねだる。搾取されていく関係に過ぎないのだ。

 解っている。充分、あたしは解っている。

 


 愛し過ぎないように。
がんじがらめにしないように。

自分以外、誰も愛さないように・・・。


 離婚した直後に誓ったあの決意が頭の中にこだましていた。と、同時にあたしは、悠也の猫みたいな眼と激しい動突を思いだしていた。


 ―所詮、人間は、快楽にはあがらえない動物なのだ。

 駅の改札を抜けて、悠也との待ち合わせ場所に到着した。まだ約束の時間より、15分程前だった。

「里沙さん。久しぶり。元気していた?」

約束の時間を10分程過ぎて悠也が現れた。
今日は、生成のジャケットに濃紺のデニムで、最初にあった時のホスト臭さはなくて、カジュアルな服装だった。年齢より、少し幼く見える。
 あたしは、悠也の顔、特に眼を見ると魔法をかけられたように自分が駄目になっていく感じがした。

鳶色で、猫みたいに悪戯っぽくて、惹き付けれられずには、いられない。 

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