《MUMEI》

 アリゾナ州 「フェニックス」 PM 10.00

飛行場に近いホテルのラウンジで 淡いブルーなネオンライトを浴びながら…静かにカクテルを飲み交わす
栄一とユカの姿があった 

「ユカちゃん 東京へ帰ったら この事を 新聞記者の松浦に 必ず伝えてくれよ… たぶん 博士の事で 警察や マスコミからいろいろ聞かれるだろうから… 」 
最上階のラウンジからは 飛行場の点滅しあうオレンジ色の光りが幻想的に映っている 

「栄一さん… どうしても一緒に帰る事はできないの… 」 
ユカが 寂しそうな表情で栄一を見つめながら言った。 

「リードの話しでは 博士を殺したのは多分 あのパスカルだろう…… 
それに… どうしても 見ときたいモノが あるんだ… 」 
栄一は 窓の外…慌ただしく動き廻る飛行場を眺めていたが… 
そう言い終えるとユカの細い手をとり… じっと ユカを見つめた…

見つめ合う二人は……淡いカクテル光線のなかで……ゆっくりと 唇を重ねていった 。 



アリゾナ州 「フェニックス」 

赤いスポーツかーに乗り込み 楽しそうに街の中心を疾走する男…マイクと女…オルガ……。
二人は車を止めると 賑やかな街の中へ消えていった 。

その二人を 車の中から じっと見つめる サングラスの男…パスカルがいた 。

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