《MUMEI》

息絶えた鳶を見下ろしながら頬に散った朱を拭う
益々量を増していく薄紅へと向いて直ると
ソレに色を添えてやるかの様に殺鷹は自身の黒羽を片方千切り取り
「……世界は、何も二色である必要はない。これからは好きな彩りで皆、咲けばいい」
黒花を撒いて散らすと踵を返した
梟と烏、まだ微かに息のある二人の身体を解放してやり
雀と三人を何とか担いで半ば落ちる様に宿り木を降りる
降りた先には大量の鳥の死骸が落ちていて
その中に埋もれるかの様に、ひばりは座り込んだままだった
「……お帰り。殺鷹」
か細い声での出迎えの言葉に、漸く殺鷹は全身に張りつめていた緊張を解いた
脚からは力が一気に抜け、その場へと座り込んでしまう
「私は、黒花の守り人としての役目をきちんと果たせていたかな?」
弱々しい笑みを浮かべながらの殺鷹に
雲雀は相変わらずの表情で、だが頷く事をする
「……頑張った。殺鷹のおかげで花は均衡を崩さず世界も無事。烏も梟も、そして白鷺も皆、此処に居る」
全てはうまく事が運んだのだとの声に、殺鷹は安堵の表情を浮かべる
「それなら、何よりだ。……雲雀、少し眠ってもいいかな?流石に疲れたらしい」
段々と疲労に重くなっていく瞼
雲雀が小さく頷くと、殺鷹は完全に瞼を閉じた
穏やかな寝息が聞こえ始め、子供の様な寝顔に雲雀は笑う声をつい漏らす
「……有難う。アンタが私の黒の鳥で、本当に良かった。本当に、ありがと」
面と向かっては中々言う事の出来ない感謝の言葉
殺鷹が眠り、聞いていないだろう事を確認した後
雲雀は彼の耳元で、何度となく呟いていた……

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