《MUMEI》 「ん。熱いから火傷するなよ?」 「しないよ」 何食わぬ顔で、 あたしはカップを受け取った。 「ていうか、先生、何でコーヒーなの? 甘党なのに」 「ん? たまには苦いのもいいしな」 「ふーん‥」 「ま、結局はチョコレートシロップ──」 入れるんだけどな、 たぶん先生はそう言いかけたんだと思う。 でも、 全部は言わなかった。 ‥何で‥? 「お、そうだ。──よ‥っ」 先生はカバンを机に乗せて、 中から何かを取り出した。 「これ、貸してやるよ」 「──何これ」 「詩集。もし暇だったら読んでみたらどうかな、と思って」 前へ |次へ |
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