《MUMEI》

「先生、いつもこういうの持ち歩いてんの?」

「信号待ちとか、退屈だろ? そういう時に、パラパラっ、とな」

「信号変わるの見過ごしたりしない‥?」

「ぁー、するする」

「ダメじゃん」

「だよなぁ」

苦笑して、

先生はコーヒーを一口啜った。

「──熱っっ!」

「!? ちょっ‥先生大丈夫‥?」

「ぉ、おう、大丈夫大丈夫」

そう言って、

念入りに‥

コーヒーに息を吹き掛ける先生。

「──ん‥、んん。今度は大丈夫だな」

「先生──もしかして猫舌‥?」

「ん、おお──良く分かったなぁ」

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