《MUMEI》
【1】夢と絶望と始まりと【本文1】
「お姉さん、どういう事??コレって犯罪ですよ??」
「すいません!!!」

 あー…またやっちゃったよ。どうしよう。
 え、何をやったって???
 結構綺麗めのホテルのレストランでご飯食べたのはいーんだけど…お金足りない…。要するに、ムセンインショクってやつです。
 私はセリア。訳あって一人旅をしてるんだけど、これで何度目だろう。お金の計算間違えてご飯食べたりホテルに泊まったりしちゃうの。悪気は無いんだけどな…。
 その度にそこで何日かタダ働きって事で許して貰うんだけど、ココ、結構大きな街だから許してもらえるかなぁ。キツそうな目した悪どい顔のオッサンだし…。警察に捕まったら旅続けられなくなっちゃうからなんとか避けたいんだけど、今度こそお手上げかな。

「まぁお姉さん、悪い人には見えないし、美人さんだし、食べた分働いて貰おうかな。」
「許して貰えるならなんでもします!!」

 よかったぁ・・・許してもらえるみた・・・

「じゃあ、夜10時に俺の部屋来てね」

 ゲ。そうきたか。
 誰がニヤケたキツネ顔の気持ち悪いオッサンの相手なんか。

「警察行くのとどっちがいい??」

 だから、ニッコリしてもそのキツネ目じゃ気持ち悪いってば!
 ・・・いや、それどころじゃない。この絶対絶命のピンチをどう切り抜けようか。
 ・・・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・
 ・・・・・・・・だぁぁっ!無理!思いつかない!どうしようどうしよう!!!



「そこのパニックに陥ってるお姉さんの代わりに私が払うわ。」


 後ろから声がしたけど・・・いつもはこういう場合男性なんだけど、それにしてはエライ可愛い声・・・。
 恐る恐る振り返ると、黒髪の美しい少女が立っていた。大人びた顔立ちだけど、背は低いし胸も無いから12才くらいかな。


「ユーリ殿?!それはなりません!!こんないかにも悪そうな奴は警察に突きださないと!!」

 アレ?オッサン、さっきと言ってる事と違ってない??

「何?このお姉さん、頭は悪いんだろうけど悪気はなさそうだしね。それに、貴方が金とオンナに汚い人って事、私、知ってるのよ。ケジナンさんの悪事、何回も夢に見たから・・・。」

 ちょっと、頭ワリイのは認めるけど、初対面の人間ぬその言い草は・・・ん?夢で見た??

「しかし、それとこれとは・・・」

「このまま警察行ってもいいけど、夢の事、ぜーんぶ話しちゃうわよ?ケジナンさんはそれでもいいの??私だったらそんな危険な事せずにきっちりお金貰って帰ってもらうけどなぁ・・・」

「わかりました・・・ユーリ殿がそこまでおっしゃるのであれば・・・」

 美しい少女の話術に、オッサン撃沈。凄いわこの子。

「・・・こっちがお姉さんの分のお金で、こっちが私の分ね。じゃあまた来ますね、ケジナンさん。」

 少女は端正な顔立ちで、ケジナンというおやじにニッコリと微笑んだ。人はコレを悪魔の微笑みと呼ぶのだろう。


「・・・お姉さん、そこに突っ立ってないで、早く一緒に来て下さいよ。」
「あ、はい、わかりました!ありがとうございます!ありがとうございます!」

 助かったぁ・・・。と、訳もわからないまま、先を行き出ていく少女に小走りで付いていった。

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