《MUMEI》
【1】夢と絶望と始まりと【本文2】
「ユーリ殿、今日は遅かったんだな。」
「久しぶりに友達とお話してたから。この人、いろんな所ブラブラしてるから中々捕まんないんだ。心配かけてごめんなさい。剴さん。」

 ホテルから出ると、黒髪の少女・・・ユーリは大男から話かけられた。背格好からして私と同じ17、8ってトコロか。大刀を肩に引っ提げてる所みると、ユーリの用心棒みたい。

「ごめん、今日先に帰ってて欲しいな。この子も結構武芸には通じてるから、襲われても大丈夫だよ。」
「わかった。先に帰って親父殿の酒の相手をしておくか。」

 剴と呼ばれた大男は、そう言うとご機嫌に立ち去っていった。




 ・・・さっきから思ってたんだけど・・・。助けてもらったのはすっごい感謝の気持ちの嵐だけど・・・。色々ブラブラしてる、とかさ。武芸は一通り習得してるけど、何で初対面のこの子が知ってるの??


「助けてもらったのいいけど・・・。色々ブラブラしてる、とか、武芸ができるとか、何でが知ってるか、知りたい??」
「な・・・!!!」

 なんでそこまで!この子、人の思考が読み取る事ができるっていわれる、サイコシンクロ者?!

「・・・そんなびっくりしなくても。お姉さん、さっきからずっと不思議そうな顔してるから、誰だってすぐわかるよ。」

 ・・・サーセン。

「歩きながら話ましょう。私はユーリ。夢見師・・・つまり、夢占いをする者。私の見た夢は現実。それは過去か未来かは解らないけどね。貴女の夢も見たの。お金無くってケジナンにナンパされてパニックになってる夢・・・しかも、昨日。ケジナンの服が今日のと全く一緒だったし、見張ってたの。」

「・・・」

 夢見師。この世界では占い師はとても優遇され、政治でもその力は重宝される。夢見師の夢は現実となると、占い師の中でもトップクラスの扱いを受ける。
 その夢見師の中でも服装など詳細まで覚えている者はごく僅かである。何故なら・・・残酷な夢ですら詳細に覚えている為、占い師として成長する前に発狂してしまうのだ。

「以前に、お姉さんの夢、何回か見てるんだ。強盗に誘拐されそうになった時に一人でやっつけちゃう夢とか、一人旅で色々な人に会ってる夢とか・・・今日みたいにお金の計算間違えてお店入っちゃう夢とか」

 普通なら、こんな小さな子が夢見として才能を発揮しているとはまず考えられない。だけど、この子の言ってる事は全て本当に私の身に起こった事だ。




「・・・お姉さん、まだ名前聞いてなかったよね。」
「・・・そうだね・・・私はセリア。ユーリちゃんの言うとおり、色々な所を一人旅をしてきたわ。」
「ちゃんは辞めて。言われ慣れてないから。ユーリでいいよ。セリアさんには今日から1年間程、私のお家の受付やって貰おうかな。今日の飲食代と宿泊代を兼ねて。」
「え、助けてくれたんじゃなかったの?!」
「だって、お家の受付やってくれる人探してたんだもん。」
「そんなぁ〜!旅が続けられな・・・」
「じゃあ、警察行くのとどっちがいい?」


 笑顔のユーリが指差す方向には、紛れも無く警察だった。
 話しながら歩いていたので全く気付かなかったけど、いつの間にか警察にやってきていたのだ。

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