《MUMEI》

 ラピスラズリの小川は相変わらずゆっくりと流れていたが…中身のない銀色の太刀魚や鱗のない金色の鯉たちの姿は消え…
次第に鉛色の銀発色を帯びてきていた… 

宏介は 通称ビルから…そこの皿を浮かせたり沈ませたりしている河童の九ちゃんコト…伊奈原九一が…
あのコンドル一号の九ちゃんだったとは……とても信じられなかったが……
言われてみると…コンドル一号の九ちゃんの名前までは…知らなかったのだォ

その一昔前の懐かしい記憶が…宏介に思いを甦えらせていた 。

コンドル一号二号は確かに十数年前にはお笑い界のスーパースターだった… 

絶頂期にはテレビで毎日その姿を見ない日はない程の売れっ子で… 
コンビを解散してからも 二人の人気は衰えを知らず…
特に一号だった九ちゃんの人気は…テレビの司会やバラエティーで 引っ張りダコだった…が…

「そう…確かあの事件は四年前の事だったんだな… 」 

小舟の上では通称ビルが…
どこに置いてあったのか…酒の入った徳利を口に注いではひとりでぶつぶつと…つぶやいていた 

哀れ九ちゃんは すっかりビルに飽きられてしまっていた…

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