《MUMEI》
逢瀬2
 二人で、悠也の行きつけの店で、食事をした。平日にも関わらず、その店は、込んでいて若年層が多い店だった。

 ミニスカのデニムや肩を出して肌を露出している女の子達の服装に一瞬目を奪われた。

 黒のジャケットとシフォンスカートといういでたちが、いかにも『仕事着』という感じで、悠也とは釣り合いが取れてなく感じられて後悔した。
 
 悩んで、決めた服だっったのにすごく、オバさんくさい。

「なんか元気ない?」
悠也が屈託なく尋ねる。

「ちょっと浮いてるかも。あたし」

「そんなことないよ。」

「そうかな?」

「その服、品が良く見える。このブランド結構、値段高いでしょ?里沙さん、高給取りだね」

あの晩は。『里沙』と何度も呼び捨てにしてたのに。
 『さん』がついてる意味は、いったい何なんだろう?
 
今日は、何もしないつもりなんだろうか?

あたしは、ふと何をして貰うつもりだったのか充分、期待していた自分にはっきり気が付き心臓が早鐘のようにドキドキ
としているのを感じた。

「やさしいのね。ってゆーか悠也君は、ホントに口がうまいよね」

「軽く見える?」

「そうだね」

「ひでーな!」
唇を尖らせて、すこしふてくされた仕草がこの男には、すごくよく似合う。年上キラーかと思う。

あたしがクスリと微笑んだ時だった。

「悠也。久しぶりじゃな〜い!」
と、ハスキーな女の声がした。
見ると、22,3歳位の大柄の女が親しそうに悠也の肩に手を回していた。

 その女は、おしりが見えそうなショートパンツを穿き、胸の谷間をちらりと覗かせた、ぴちぴちのTOPSを来て、爪も長く、化粧も濃いフェロモン過剰な女だった。

 悠也の顔がサッーと変わり、眉間に皺を寄せた仏頂面になった。今まで、見たこともない険しい顔にただならぬものを感じた。

その女は、すっかりあたしの存在を無視して、尚も会話を続けた。

「ねえ、悠也。別れちゃったんだって?やっぱ、あたしのせい?」

そう、女が言ったのと同時だった。すくっと悠也が席を立ち、まだ注文したMEMUも全部揃ってないのに、

「里沙、出よう」

と言うと、さっさっとレジに行ってしまった。

 呆然と女が立ちすくんでいる。

あたしは、慌てて悠也の後を追いかけた。
悠也は、会計を済ませると女を鋭い目で睨みつけていた。

財布からお金を出したあたしに目もくれずに悠也は、外に出た。

「悠也、割り勘にしよ?」
とあたしが言うとはっと我に返り、クスリと笑い、
「いいから」
と言った。
「ありがとう。ご馳走様」
とあたしが出来るだけ爽やかに丁寧に言うと、
「ごめん。里沙さん」

と、か細い声で呟くように言った悠也が泣きそうな顔になったように見えたのは、気のせいだろうか。
 
―愛おしかった。


まるで、捨て猫みたいな顔をしてる、目の前の男に何かしてあげれる事は、ないのかとそう思わずにはいられなかった。

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