《MUMEI》
気配り上手な葛西先輩
それを春日さんが望んでいないと知りつつ、俺は質問した。


《田中君、修学旅行先知ってる?》

「知りませんけど…」


(急に何だ?)


十月に修学旅行があるのは知っていたが、それが何故今の話と結びつくのかわからなかった。


《修学旅行先、北海道なんだよ》

「え!?」

《うちの学校、グループ毎に自由行動するのが基本だし》

「…」


(ということは…)


《会えるよ、普通に》


俺の期待をそのまま葛西先輩は口にした。


《春日さんの自宅近くに観光客も利用する市場があるから、同じグループになったメンバーも文句言わないだろうし》

「本当に?」

《あぁ》

「ありがとうございます!」

《別にいいよ。…ところで、祐は?》

「あ…」


(そういえば、静かだな)


話に夢中で俺は祐の状態に気付かなかった。


「…寝てます」

《やっぱり。…悪いけど、ちゃんとした所で寝かせてやってくれる?》


(さすが)


葛西先輩は、祐が床に寝ているのをわかっていた。


「わかりました」

《ごめんね。あ、あと携帯も充電よろしく》

「はい」


葛西先輩は、祐の携帯の電池が残り少ないのもわかっていた。

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