《MUMEI》
【1】夢と絶望と始まりと【本文3】
「ハハハッ!セリア殿もやられましたね!!実は私もなんですよ!」

 大男・・・邑村・剴(くにむら・がい)が笑いながら言った。どうやら私達が帰るまでの短時間に大瓶3本はいったらしい。

「馬鹿モン、お前もケジナンと一緒で女にだらし無いからツツモタセなんぞに会うんだろうが。全くぅ。」

 と、言ってる事とは裏腹にお酒でご機嫌なチョビ髭ダンディは、ユーリのパパ、マレルド・ル・コルダさん。

「ハハッ、おっしゃる通りです〜」
「そうだ!ところで、セリア殿も飲まぬか?」
「お酒にだらしがないのはどっちもどっちよ。今日ここに来たばっかりでクタクタのセリアさんにまで酒を勧めるなんて・・・明日どうなるか・・・」
「うっ」
「うっ」

 ユーリの冷たい目線に、お酒でほてった二人の体も凍りつく。

「さ、セリアもこの間に早く寝て下さい。何時間も飲み屋のオネエサン、やりたくないでしょう?」

 ・・・確かに。

「え、えぇ、ありがとう。ではおやすみなさい!」
 そう言って、客室に案内してもらった。



 実はココ、警察出張所の中で。実はマルドルさんは警察官で・・・つまりユーリの家自体が警察出張所なのだ。

 そう、ユーリの受付の話を受けるにしろ断るにしろ、ここに連れて来られる予定だったのだ。どうも、ユーリはこうやって行き倒れなんかを必ず保護するのはいいんだけど、必ず保護する人間をおちょくって遊んでいるらしい。剴さんもその一人。


「・・・さっきはびっくりさせてくれてどうもありがとう・・・。」
 ちょっと皮肉を言ってみた。
「お礼なんか言う事ないよ。」
 アレ、子供らしく照れてるのかな?
「落とし物は、ちゃんと警察に持って行かなきゃね。当たり前の事をしたまでよ。」
 コイツ・・・。
「明日から1週間は働いてね。それでチャラになるから。じゃあ、おやすみなさい」
「うん、ありがとう。おやすみなさい。」
 そういうと、ユーリは部屋から出ていった。




 ・・・さっきはコイツ・・・とも思ってたけど、よくよく考えたら、ちゃんと助けてくれたんだよね。自分の力を使って。

 夢見は発狂する事が多い。詳細まで覚えていればなおさらだ。原因は、残酷な夢を見るのもある。でも1番有力視されるのは夢の中でのサイコシンクロともいわれる。
 サイコシンクロとは、人の思考を読み取る能力や人の事を指す。普通はリラックスして体の力を蓄える睡眠という時間帯に、現実になる夢を見て、しかもサイコシンクロという自分の精神を擦り減らす能力を使用してしまう事によって自我が崩壊するのだ。

 そんな能力をこんな小さい時から・・・。と考えると、不憫で仕方がない。そして、彼女の心の強さが伺える。これはひょっとすると・・・いや、まだ彼女は12才だ。あの使命を果たすにはまだ早い。

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