《MUMEI》
【1】夢と絶望と始まりと【本文5】
−−−1ヶ月後−−−



 私はまだコルダ家に滞在していた。ユーリの事がひっかかり、中々旅立つ事が出来ずにいた。


「おーい、セリア姉ちゃん!ユーリ見なかった??」

 1週間前、同居人がまた増えた。李蓮華(リー・レンファ)と、凄く女の子な名前だが、名前以外は見事に男の子。ユーリと正反対にやんちゃで単純。(私と似てるっていうツッコミ厳禁)短い髪も大きな瞳も真紅で真っ白な肌が特徴的。チャインという大陸東の端−つまりルグール国とは全く逆から来たといっている。15才って言ってるけど、ユーリより年下に見えて仕方がない。

 同居人となったいきさつは・・・身ぐるみ剥がされて道に倒れていたという以外は私と程ど一緒なので割愛。



「んー?蓮華のトコにいるとばっかり思ってたんだけど、そっちにもいないの?」

「えー!あいつこっちにもいねぇのかよ!剴兄ちゃんトコロにもいないし…勝手に出てったのかな…どうしよう…!」


 ユーリは常日頃命を狙われているらしい。私も一緒にいる時に何度か襲われた。「夢見」を忌み嫌う者や、この国や街の利益になっては困る人達に狙われるらしい。
 私は話相手(玩具とも言う)。剴君や蓮華はユーリの護衛兼警察見習いとして下宿している。


「わかったわ。私も探して見るわ。剴君はどこ探してるの?」

「うーん、ユーリに手を出す奴らの屋敷近くで見張りにウロついてくるって。僕は街と山手を探してくるよ。」

「じゃあ私は海を見てくるわ」

「えー!こんな時間に行くかなぁ…?」

「いるかもしれないじゃない。じゃ、山手を頼んだわよ!」




 この街の海は本当に美しいの。神様が作ったんじゃないかってくらい。その中でも夕日は格段で綺麗で、思わず祈りを捧げてしまう。この時期の夕日は最も美しいと言われている。だけど風は強く寒いので、誰も近こうとはしない。



 来てみたはいいけど、やっぱり後悔。寒すぎる・・・だけど・・・大きな夕日が沈んでいく様子は・・・涙が出そうなくらい感動してるよ、私。でも、それどころじゃない。早くユーリを探さないと。

 10分くらいして、真っ白な白浜にぽつんと黒い陰を見つけた。ユーリだ。髪も黒なら服も黒いローブ。そんな恰好はこの街でユーリくらいだ。


「ユーリ、そんな所にいたんだ。風邪ひくから早く帰ろう。お父様もみんなも心配してるよ。」

「セリア・・・」

 振り反ったユーリの目に涙が浮かんでいる。この気丈なコが・・・何か恐ろしい夢を見たのか・・・。

「どうしよう・・・悪魔が来る・・・!」

 そう言うと、泣きじゃくりながら抱き着いてきた。
 今迄夢の事で泣いた事は一度も無いというこの気丈な子がここまで泣いているとは・・・。ゆっくり聞いてあげなきゃ・・・。



「悪魔・・・?」

 手を肩に添え、抱きしめながら聞いてみる。

「悪魔がきて・・・この街を一瞬で炎・・・に・・・どう・・・しよう・・・うぇぇ・・・」

「そっか・・・それで神様に祈りを捧に来たのね・・・そんな事しないで下さいって・・・」

 こくりと1度だけ、小さく頷いた。

「・・・じゃあ、このセリアと、旅に出る??中央のセントル・シアに行かない?」

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