《MUMEI》
▽
「はじめまして、惇の兄、加藤仁です」
「はじめまして、…潮崎隆志です」
「分かってる、よくテレビで見かけるから」
惇に、拓海さんにやっぱり似ていない…。
穏やかな笑顔で促され俺は椅子に座る。
▽
「拓海さんは?」
「あいつがいるとややこしくなるから置いてきた、今日はしっかり話たかったからね、あ、煙草良いかな?」
「はい、どうぞ」
俺が来るまでの間すでに何本か吸っていたらしい。
灰皿に短くなった吸い殻が数本点在している。
髪の色がかなり明るめで、服装は派手めのアメカジ。
裕斗が少し前までハマっていたクロムハーツのアクセサリーを幾つも身につけている。
…素人ではない。
直感でそう思うと、仁さんはふと、緩く微笑み、
「去年サラリーマン辞めて、今はホストクラブで働いてて…、惇にはまだ言ってなかったけど」
「……埼玉でですか?」
「いや、新宿まで通ってる。引っ越すのも面倒だし」
「…そうなんですか」
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