《MUMEI》







「はじめまして、惇の兄、加藤仁です」

「はじめまして、…潮崎隆志です」




「分かってる、よくテレビで見かけるから」





惇に、拓海さんにやっぱり似ていない…。





穏やかな笑顔で促され俺は椅子に座る。





「拓海さんは?」



「あいつがいるとややこしくなるから置いてきた、今日はしっかり話たかったからね、あ、煙草良いかな?」



「はい、どうぞ」





俺が来るまでの間すでに何本か吸っていたらしい。



灰皿に短くなった吸い殻が数本点在している。







髪の色がかなり明るめで、服装は派手めのアメカジ。




裕斗が少し前までハマっていたクロムハーツのアクセサリーを幾つも身につけている。




…素人ではない。




直感でそう思うと、仁さんはふと、緩く微笑み、




「去年サラリーマン辞めて、今はホストクラブで働いてて…、惇にはまだ言ってなかったけど」



「……埼玉でですか?」




「いや、新宿まで通ってる。引っ越すのも面倒だし」


「…そうなんですか」

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