《MUMEI》
【1】夢と絶望と始まりと【本文6】
「・・・私の夢は現実・・・中央に行ったところで変わらない・・・」

 ユーリは頑なに答える。今まで、どれだけ辛い夢をみて、辛い予言をして、辛い仕打ちをされてきたのだろうか・・・。

「何の為にこの国で、いや世界で夢見師が崇拝に近い形で重宝されている、その意味は?」

 私の問い掛け。賢いこの子ならきっと気付くはず。

「・・・」
「怖くないよ。言ってごらん。」
「・・・この国を・・・世界の未来を守る為・・・不幸な現実を、なんらかの形で回避するために、神様からの警告を受け取る役目・・・。」
「よく知ってるじゃない。」
「小さい時からよく気持ち悪いって言われたから・・・お父様が教えてくれた考え方・・・。でも皆は馬鹿にする・・・。」

 やっぱり・・・。街と言ってもやっぱり田舎だね。自分達と違うものはスグ廃除しようとする。でもこの子は違う。自分を廃除しようとしてる奴まで助けたいと思って、でも自分は未来が見えるだけで無力で。だから神に祈っていたのか・・・。

「私、覚えてるよ。出会った時、ケジナンは【ユーリ殿】と貴女に対して尊敬語を使ってた。アイツむかつくけど、それははっきりと見てた。中央ではアレが普通なんだよ。」
「・・・そんなの嘘だよ・・・。アイツが特別に私の能力を見て利用しようとしてるだけで・・・」
「私が色々な所を旅してるのは知ってるでしょ?アイツ、言葉遣いや方言からセントル・シア出身ぽいし。中央行った時に、パルークス公爵家の三男坊がリゾートでホテル経営してるって聞いた事あるけど、アイツの事じゃないの?」

「・・・」
 まだ少し潤んだ漆黒の瞳で、こちらを見上げる。

「何せ利用しようと思ってたらたくさんの警察への寄附なんてしないよ。貴女に直接手渡すはずよ。まぁ女にだらし無いのは本当みたいだけどね。」

「・・・」

 きょとんとしている顔で、こちらを見ている。

「ちょっとは、行ってみる気になった?」
「・・・目の前にいる貴女、本当にお馬鹿で計算の出来ないセリア??」
「もしかして、自分が私に言い負かされると思ってなかったから泣き止むくらいびっくりしてるの??!!」
「うん。当たり前じゃない。」
「うぎゃっ!もぉムカついた!!アンタ絶対中央に連れていく!!いいわね!!」
「仕方ないな。ついてってあげるわ。お金計算出来ないと困るでしょ。さ、先帰ってお父様に話してくるわ」

 そう言うと、美しい夕日を背に街へ戻って行った。
 ・・・なんか釈然としないけど、まぁあの子が泣き止んだし、まぁいいか。
 日はもう暮れかけて、七色の空がどこまでも続いていた。神に少し祈りを捧げ、私も帰途についた。

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