《MUMEI》 愛は会社を救う(51)自分の席に到着した丸亀は、机の上に立ててあるファイルを片っ端から手に取って、慌しく中を開いては、また元に戻していく。 それを繰り返すうち、一つのファイルが湯呑と接触し、勢いよく倒してしまった。 「たいへん!」 由香里が布巾を取りに給湯室へ走る。幸いお茶は少量しか残っていなかったらしく、甚大な被害には至らなかったようだ。 丸亀はそれに構う余裕も無く、今度は袖机の引き出しを探り始める。少し厚めのファイルを何冊か取り出し、さっきと同じように中身を確認していく。 副支店長は、さも苛立たしそうな表情で、丸山の背中を睨みつけていた。中年特有の、てらてらとした赤黒い顔。その片方の膝は、ずっと小刻みに揺すられ続けている。 袖机にも探している資料はなかったらしく、丸亀は動きを止めて、あちこちを見回し始めた。 そしてふと、左斜め前にある山下仁美のデスクに目を止めた。 前へ |次へ |
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