《MUMEI》
愛は会社を救う(53)
資料室に戻ると、私は出し抜けにキャビネットを開け、古いファイルを繰り始めた。
平成から昭和へ。もともとそこに収まっていた保存資料を、凄まじい勢いで捲っていく。
「急に、どうなさったんですか」
真率な性格の由香里が、心配そうに顔を覗き込む。
不要な動揺を与えないよう、私は手を止めて微笑を浮かべた。
「少し確かめたい事ができました。大丈夫。藍沢さんにも、後できちんとお教えしますよ」
それを聴いて、由香里がようやく安堵の表情に変わる。
今日はバレッタではなく、濃紺のリボンで髪をまとめている。ふっくらした身体付きとはアンバランスな幼ない顔が、余計に愛くるしさを感じさせた。
「それより、この前渡した資料には目を通していただけましたか」
そう言いながら、私はそっとスカートのポケットを指差す。
「あ、はい。全部読みました」
今度は少し緊張した面持ちで、由香里はメタリックピンクの携帯をポケットから取り出した。

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