《MUMEI》
Epsode1-1
「俺、雅也のこと好きなんだ。…だから付き合って?」

杉崎雅也が友人、近野雄斗から告げられたのは2年生最後の日のことだった。

元々クラスメイトであり、親友と言っていいほど仲が良かった2人。雅也は雄斗に行為を寄せながらも、今の関係を壊すことを恐れ気持ちを伝えることはしていなかった。そのため叶わぬ恋と諦めかけていた時の雄斗からの言葉。
正直驚いた雅也ではあったが、雅也自身、雄斗のことが大好きであったため二つ返事で了承した。



それからの毎日は夢のようだった。叶うはずのない恋が叶ったのだから。付き合い初めてすぐ春休み入ったことも幸いして毎日電話やメールをした。時には予定が合った日にデートもした。もちろん2人とも外に出かけたい気持ちもあったが外に出かければ人の目が気になる。そのためデートの場所はもっぱら互いの家だった。
確かに端から見たら質素なものではあったが2人はそれだけで十分幸せだった。お互いが側にいるだけで満足だった。
2人でいる時間こそ究極の幸せなのだ。



ピピッ……

「んっ……」

軽快な目覚ましの音に雅也はゆっくり身体を起こした。眠気に再び眠りそうになりながらも、今日から新学期であることを思い深く息を吐いた。
準備をしようとベッドから抜けだそうとした時、右手の自由がきかないことに気付いた。その先に視線を向けると雅也の手を握り締め今だ熟睡している雄斗の姿があった。
その姿に雄斗が泊まったことを思い出しながら安堵の表情を浮かべ、まだあどけなさの残っている表情で眠っている雄斗に頬を緩ませた。
普段、雄斗が雅也より遅く起きることはないためいつも見ることの出来ない寝顔に魅入っていると突然強い力に腕を引かれた。
目を見開いた雅也の視界には悪戯っ子のように笑みを浮かべた雄斗がいた。

「え!ちょ…何時から起きてたんだよ?」

混乱する雅也に雄斗はクスクスと笑いながら

「ん?結構前。多分雅也起きる前からだね。」

あっけらかんと答える雄斗に軽く苛立ち雅也は真っ赤になった顔を覆いながら睨み付けた。

「そんな顔しても怖くないって。てか睨むなよ。美人が台なしだぜ?」

「うるさい!!雄斗が悪…っ!!」
茶化すような口調で行ってくる雄斗に反抗しようと口を開くものの上から降ってきた雄斗のそれに口を塞がれ無駄に終わった。

「んっ…ふぅ……」

突然の口づけに大人しくなり始めた雅也の薄く開いた唇の間から舌が滑り込みゆっくりと舌を絡ませていった。
雅也も観念したのか雄斗の服をにぎりしめながらくぐもった声を上げて自ら舌を絡ませた。
ゆっくり唇を離すと名残惜しそうにどちらともつかない唾液が糸を引いた。

雅也は赤かった顔をさらに赤らめながら雄斗の胸に顔を埋め、肩で息を繰り返しながら自分を抱きしめながら背中を撫でている雄斗の膝を軽く叩いた。


「もー……いきなりするの無しだから……」


顔をあげることも出来ないまま言葉を紡ぐ雅也に雄斗は髪を梳きながら


「だって雅也可愛いんだもん。我慢できなかった」


あまりにも真面目な表情で言う雄斗の言葉に目を見開きながら小さな声で「馬鹿」と呟くとすぐに立ち上がり準備を始めた。

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