《MUMEI》

「ぁ、うん──」

でも、

書く事なんかない。

「特になし、でいっか──」

「ん、何か1つくらいあったんじゃないか?」

「だって、誰も早退してないし、何も変わった事起きてないし」

「まぁ、言われてみれば確かに‥そうだなぁ」

カリカリと頭を掻いて、

苦笑した先生。

「じゃ、いいか『特になし』で」

「はぁ‥」

いいんだ‥。

「ぁ、そうだ佐原」

「何‥?」

「ぁ、ぃゃ──何でも」

はぐらかすみたいに、

先生はあたしから目を逸した。

何だかその表情は、

照れてるみたいにも見えた。

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