《MUMEI》 ウエスタンラリアット生贄の美少女は、不安な顔で完練英雄を見つめた。 この怪物から助けてくれるのだろうか? 完練は構えた。ドエス魔人は余裕の笑顔。 「男に興味はない。しっしっ」 「とうとう人を犬扱いしたね?」 完練も怒りの笑顔。叫びながら突進した。 「許さん!」 飛んだ。ジャンピングニーパット! 「嘘!」 顔面に炸裂。ドエス魔人がダウンした。 そこをジャンピングエルボードロップ! 「NO!」 完練はなぜか左腕に黒いサポーターをしている。その左腕を高々と上げると、サポーターを少しずらしながら、「ウィー!」と叫んだ。 手にはロングホーン。小指と人差し指を立てて猛牛を表している。 ドエス魔人が立ち上がると、完練は激走。太い左腕をドエス魔人の喉もとに叩きつける。 「ウエスタンラリアット!」 「だあああ!」 ドエス魔人は吹っ飛び、急な坂を転げ落ちていった。 「あーれー!」 「今だ!」 完練は素早く縄をほどいた。彼女は感激しきりだ。 「ありがとうございます。このご恩は終生忘れません」 「話はあとだ。また奴が来る前に安全な場所へ移ろう」 「はい」 完練は美少女の手を握ると、走った。 「大丈夫か?」 「優しいんですね」 「ヤらしい?」 「え?」彼女は笑った。 いい場面のときにボールが顔面に直撃! 「どわあ!」 完練は目が覚めた。ベンチの上だ。 「すいません!」 小学生の女子二人が、慌てて謝った。 「幸い僕は人がいい」完練は人差し指を振った。 「あの、おじさん、ボールを取ってくれますか?」 「おじさん?」 完練はいきなり怒った。 「29歳の青年をつかまえて、おじさんとは、戦争を仕掛けているに等しいぞ」 「あ、すいません。お兄さん」 「そもそも、おじさんおばさんというのは、親戚の叔父叔母に言う言葉であって、年配の人に言うセリフではなーい!」 突然カメラ目線で声が裏返る。 「今週も、なーい!」 ポカンとする二人の少女。完練は一人で反省した。 「そうか、君たちまだ生まれてないか」 完練がボールを蹴ろうとすると、一人が言った。 「蹴らないでください」 少女の強気の姿勢に、完練は笑顔が硬直した。 「いきなり指導されてキレたかな。君たちを大人と思うからこそのウエスタンラリアットだ、ウィー!」 「日本語喋ってください。意味わかんない」 「大人って何歳から大人よ?」 小学生をムッとさせてしまった。完練は少し焦った。 「そりゃあ、小6はもう立派な大人だよ」 「ウチら小5なんだけど」 「うっ…」 少女は笑いながら聞いた。 「じゃあさあ、お兄さんは何歳からおじさんだと思う?」 「だから年齢は関係ないって。70の青年もいればハタチの老人もいる」 決まったかと思ったが、言葉の関節技で切り返す天才少女。 「さっき少6から大人って言いませんでした?」 しまった。完練は額に汗。 「年齢は関係ないんでしょ?」 「矛盾してんじゃん!」 「2対1とは卑怯な」 「誤魔化さないでください」 「仕方ない。私のニックネームは矛盾帝王。カンラ、カンラ」 「誤魔化しにもなってないんですけど」 かなり不利だ。 「やるね。君たち。相手の矛盾を突くとは、さては言論部か?」 「そんな部ないよ」 「高校生になったら弁論大会に出て優勝を狙ってるだろ、図星か?」 「いいからボール返して」 完練はボールを返した。 「そうだ、君たち小中学生だって矛盾だらけだ」 「何が矛盾なのよ?」 「子ども扱いしたら怒るくせに、都合のいいときだけ大人扱いは困ると」 「そういう矛盾もひっくるめて大きな愛情で包み込むのがカッコイイ大人なんじゃん」 フィニッシュ。 「か、カッケー」 「行こ」 聡明な二人は背を向けた。完練はいきなりメモ帳とペンを出した。 「君たちの名は?」 「言うわけないじゃん」 「弟子入りさせてくれ」 「うるさいよオッサン」 「だれがオッサンやあ!」 前へ |次へ |
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