《MUMEI》

何だかわからない気持ちに襲われて、亜柚乃との距離を詰める。


「・・・亜柚乃さぁ。」
「ん?」


ふんわりと笑うのが、百合みたいだと思った。
変なの。さっきは、酷く冷たいように感じたのに。
それでも、怯えたような光は消えてない。


「もしかしてさ・・・若宮と喧嘩でもした?」
「えっ!っっええぇ!?」

亜柚乃の顔は、みるみる赤くなる。
それから、恥ずかしそうにクラスの中心に目を移した。

クラスの真ん中。
日のあたる場所。
いつだってそこに、若宮礼二(れいじ)はいる。

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