《MUMEI》 「詩郎ねぇ、千代子ちゃんの事話す時が一番嬉しそうで──」 「‥ぇ、マジですか‥?」 「だから──千代子ちゃん」 「はい‥?」 「お願いします」 深々と頭を下げて、 懇願するように、 そう言った詠子さん。 小さな、 華奢な両手で‥ あたしの両手を握り締めて。 「千代子ちゃんは、詩郎の大切な存在たから」 「?」 「どうか、見捨てないでやっておくれ──」 「詠子‥さん‥?」 こんなに、 必死になって。 こんなに、 心の底から‥ 詠子さんは、 先生を心配してる‥。 前へ |次へ |
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