《MUMEI》 「あたしのクラスを‥持つようになって‥から?」 「そう。だから──」 そこまで言って、 詠子さんは‥ ふっと目を伏せた。 「詠子さん‥?」 「ぁぁ‥ごめんね、ちょっと安心したものだから──」 ゆっくりと開いたその目に、 うっすらと涙が浮かんでるのが分かった。 「──ぁ、もう降りないと」 アナウンスが流れたのに気付いて、 詠子さんは停車ボタンを押した。 少ししてバスが停まると── 「それじゃあ、千代子ちゃん、またね」 詠子さんは、 またあたしの手を握って、 笑いかけてくれた。 前へ |次へ |
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