《MUMEI》
愛は会社を救う(54)
携帯のMicroSDには、ある情報がコピーされていた。
雑件ファイルから抽出した通達の要旨。それを、携帯メールで読める形式に変換したものだ。
「これが七並べの6と8なんですね」
以前バーで話した喩えを、由香里は覚えていてくれた。
「ええ。しかしまだ、それだけでは不十分なようです」
自分の推理には、微妙な綻びが生じ始めている…
私の頭の中は、さっきからそんな予感に支配され続けていた。
「とにかく大変でしょうが、できる限りそれを頭に入れておいてください」
それを聞いた由香里は、ただこちらを見て、はにかんだような微笑を浮かべている。
「どうかなさいましたか」
不思議に思って私が訊くと、彼女は控えめに、しかし意外な答えを口にした。
「…あれなら、もう全部覚えちゃいました」
「え?」
一瞬、耳を疑う。
「私こう見えて、"驚異の記憶力"なんです」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫