《MUMEI》
外でアヅサは樹を待っていた。病院の裏に回っている。
時間潰しに煙草を吸ってみるが、どうにも口に合わない。銘柄なんかによって味が違うのだろうか。
火を点けて直ぐ捨ててしまおうとする。
「オニーサン、いいもの持ってるねえ、
チョーダイ?」
下から顔が出てきて煙草に口を付けた。
薬浸け?
顔がほぼガーゼで覆われていて判別しにくいが、樹と同級生かもしれない。
「うわああ、生き返る……」涙でも流しているのか、骨髄まで中毒のようだ。
「一本二億円だけど」
「怪我人はいたわらなきゃ」
「何処かで会った?」
「知らない……。」
「乃木、早く戻れー」
上から声がする。
「安原!静かにしろよ!」
乃木は言い返す。立ち上がり、ふらふらと表の門へと消えた。
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