《MUMEI》
一食も抜きたくない
両手を握られた。


「……傘……」

安西の手からビニール傘が落ちている。


「先輩がさしてくれてるから平気です。」


「目立つ……」

キスは無理だと思って変わりに手を繋いだのにあまり意味が無い。


「誰も見てませんよ。」

意外と強引だ。


「安西の指は綺麗だね。長くて、指の形がいい。」


「先輩の指の方が綺麗ですよ。本当……美味しそう。」

手が、安西の口許に近付いてゆく。


「……わ 」

食べられる……!


「びっくりしましたか?」

両手が離れた。


「また人をからかうんだから!」

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