《MUMEI》

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深秋の夜…



紅葉館の外にも冷たい風が吹いていた。



『今夜は冷えますね…


…1本(燗を)お浸けしましょうか?』



勝負の行方を決め兼ねない場札を前にして、〆華は珍しく口を開いた。



兼松は返事もせずに頷き、場の「紅葉に鹿」を物欲しげに眺めていた。



その手の内に「鹿」の合い札は無い…。



「鹿」は〆華に「紅葉の青札」をもたらす可能性も秘めている。



『う〜む…』



考えこむ兼松を他所に、〆華は立ち上がって徳利を片手に、入口で待つ桜庭の所へ歩いていった。

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