《MUMEI》

『俺は惇の親父の前妻の連れっ子ってやつでね、だからまるっきり血は繋がっていない』







『俺のお袋は俺を産んだ時に死んだんだ、まあ、惇の事とは関係ない話だけどな』






『親父も今のお袋も俺達三人分け隔てなく育ててくれた、だけど惇は何をしても器用な子供だったから…、
何かと不器用な拓海とは悪気のない比べ方をされ続けてきた、拓海もな、拓海なりに頑張ってたんだけどあっさりなんでもこなしちまう惇には努力だけじゃどうにもならない事を散々見せつけられて…



そのイラつきは全て惇に直接向けられた、……と、俺は…




想い込んでいた……』










『俺は家族の仲間に入る事に必死で優しい兄貴を演じていた、


やっぱ孤独になりなくないし、なんだかんだでみんな好きだったからな…、



店は二人の血の繋がったどちらかが継ぐべきだと思ったから、俺は遠回しに辞退した。




この煙草でね?うちの親父は煙草吸いにはダシすら取る資格はないって位の職人だから……



だからな、惇も中学時代から煙草始めくさった、
あんときは面白かったな


わざわざ親父と拓海の目の前でいきなり煙草吸いだして、

後は兄貴に任したって自信たっぷりに二人に向かって笑ってな、親父はあんぐり、拓海は呆然



大人しい弟、素直な子供だって二人で想い込んでたかんな、

あの時の力強い目、


拓海は兄弟喧嘩だけは負けてないってそれまでは思ってたろうけど。


本当は違った



惇は兄貴をたてて反撃しなかっただけだった、


ま、さすがに切れて跡継ぐ事もバカバカしくなってそこまでしたんだろうけどな、


それからは惇に拓海は何もできなくなった、もう色んな意味で敵わねーの見せつけられたから、


親に逆らえねー、親の機嫌とりしなきゃ居場所のねえ落ちこぼれのあいつにはできねー事惇は笑顔でやっちまったんだからな』

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