《MUMEI》
葛藤
(つーか…)


「何で柊達まで一緒にいるんだよ」

「えぇ!? いけない!?」


(そうじゃなくて…)


本気でショックを受けている柊に、俺は軽くめまいがした。


「希と二人で回れっていう意味だろ?」


俺の隣にいけなかった祐は、希先輩の隣にいて


「お前だって柊と二人きりがいいだろ?」


そう、希先輩に問いかけた。


「わ、私は…」

「そんなの彼女なんだから、当たり前でしょ?」


赤くなりながら戸惑う希先輩を見て、志貴が口を開いた。


「そうだよ」

「当たり前」


厳と頼もそれに同意した。


「で、でもさ…祐也、水族館初めてなんだろ?」

「皆いるから平気」

「俺、…いらない?」


(何でそうなる…)


俺はため息をついた。


「やっぱりいらない?」

「違う。だから…友達として、希先輩と、彼女と二人で過さないのか、心配なだけだ」


俺は、柊がこだわる友達という単語を強調した。


「友達として?」

「あぁ」

「心配?」

「…あぁ、だから…」

「わかった! じゃあまた後で!」

「ちょ、柊?」


…柊は満面の笑みで希先輩の手を握り、走り出した。

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