《MUMEI》

「さて、ここだな、佐原家。‥佐原?」

「───────」

「おーい着いたぞー」

「〜〜〜‥、うるさいシロ‥」

「おいおい──」

先生の、

苦笑する声が聞こえる。

でも、

瞼が重くて目が開かない。

「───────」

フワリ、

と体が浮く。

先生が、

あたしを抱き上げたみたい‥。

「なぁ──」

「‥?」

「決めといてくれな、どこ行きたいか──」

「‥うん‥」

もう、

殆ど聞いてなかったと思う。

何とか地面に立って、

家の鍵を開けた。

それから後の事は、

ほとんど覚えてない──。

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