《MUMEI》

なんか……安西って二つも下なくせしてやたら大人だよな……結構、紳士だし……一生懸命だし。



……いかん。
流されるな。
俺の悪いとこだ。

きっと俺、優しくされたいだけなんだ、甘える相手を探している……でも俺はそんな自分が嫌いだ、甘えたいだけなんて子供と同じだから。
ずっと甘えてなんていられない。
それに気付いたとき、傷付けてしまう……。




とか、一人たらたら歩きながら葛藤してたらもう七時過ぎていた。
あまり遅いと乙矢に怒られてしまう……この間、遅くなった帰り道で鉢合わせたときは凄くネチネチ説教された。
自分だって遅い帰りのくせに……言わないけどさ。


雨天のせいか、いつもより三割増しで暗い。

自然と早足になってしまう……。



ぐっしょりと水溜まりに右足が浸かる不快感、……やってしまった。

電柱に濡れた足を上げる為に、寄り掛かる。
生温い感覚を指を動かして確認した。

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