《MUMEI》

「……あー、もう馬鹿。」

明日も雨なのに学校用の靴、残り一足しかない……俺の馬鹿。


「ふ…………ッ 」

うわ、なんか
今、首筋に息がかかった……気がする。


……でも確かめられ無い、後ろから電柱に押し付けられたからだ。


『声を出すな』

声が、ヘリウムガスを吸ったときのそれだ。
電子的な気持ち悪さ。


『そう、静かに……』

耳元でカチカチ、カッターの出る音がした。


……多分、男。
年齢は分からない。

振り向いたら刺されてしまう……カッターの尖端が電柱に当たっては反射する。


うなじにかかる荒い息が、張り付いて不気味だ。
舌がねっとりと唇と一緒に吸い付いてきた。


汚い、
行為だと思った。



ビニール袋を頭から被らされて、気付いたときには気配も無く、臀部に湿ったような痕があった……
その液体はもしかしなくても男ならではの生理現象で……下着まで染みてなかっただけでも良かったが、まさかこんな目に合うだなんて思いもしなかったから、その日の夜は眠れず、ひたすらに勉強ばかりしていた。

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