《MUMEI》
「思い出した。」
樹が呟く。
「何、やっと俺と婚約する気になった?」
「はいはいはい、さっきの長い髪の人、ウチの学校の生徒会にいたと思う。」
「そうみたいだな。」
しれっとアヅサは言い放つ。他人に無頓着なアヅサが珍しい。
「知ってたのか。」
「知ってるも何も俺は一度見たものは忘れないし。名前は、井上美穂、三年だろう?」
「……参りました。」
樹は感服する。
彼女に随分大人びた印象を受けたので驚いた。
一つ上とは思えない。
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