《MUMEI》

そんなことを男が知る由もなく、ただヴァンの心変わりを喜ぶのであった。

「ほ、本当か!? あ、ありがとう!!」

「礼などいい。中に入って依頼についての話をするぞ。」

ヴァンは男を伴ってホームの中に入っていった。

「まず自己紹介からだな。俺はディン。第一大陸の南方にあるエデンって村から来た。大層な名前だけどすっげー田舎なんだ。」

かなりの田舎だから多少の説明を付け加えたのだろうが、ヴァンにとっては蛇足だった。

荒野のオアシス エデン

第一大陸南部に広がる『絶無の荒野』に唯一存在する村。荒野に残された僅かな豊かな土壌の地域に作られた村で、荒野を旅する者たちにとって正にオアシスのようなもの。そのことから、理想郷を意味する『エデン』という名前を付けられた。

「それで依頼はだな……ズバリ魔獣退治だ。」

「魔獣、だと? 何故絶無の荒野に魔獣が居る。」

ヴァンは平静を保ってはいるが、驚きは大きいようだ。それもその筈、それは異常事態なのだから。

「……それって、驚くことなの〜? ドコに何がいても別にいいじゃん。」

突然、ヴァンでもディンでもない声が会話に割り込んで来た。

ホームに外から入って来た者はいない。となるとこの声の主は決まる。

「……ルキア。」

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