《MUMEI》 「あたしが寝るまで、放さないで」 「分かってる」 那加は、 寂しがりでもある。 休みの日は大抵、 俺はこうやって那加に付き添ってやっている。 那加の両親は、 仕事が忙しくてあまり来られないから── 俺は付きっきりで、 那加の側にいてやっている。 「ねぇ?」 少しだけ首を擡げて、 那加は俺を見上げた。 「あたし、いつ退院出来るかな」 そろそろ、 この白い部屋にも飽きてきたのか── 那加は毎日のように、 俺にそう訊いてくる。 その度に俺は、 「ちゃんと食えるようになったらな」 そう答えるしかない。 前へ |次へ |
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