《MUMEI》 「つまんないな──」 那加は読み終わった漫画を、 パタリ、 と閉じた。 ──その時。 コンコン、 とノックの音がした。 「那加ちゃん、お昼よ〜」 那加の担当の看護師── 佳代子さんが、 食事を乗せたワゴンを押して── 病室に入って来た。 「あら日向君、来てたのね」 「ぁ‥、はい」 ペコリとお辞儀をすると、 佳代子さんはニッコリ笑った。 「日向君はほんとに毎日来るわよね──、雨の日も風の日も」 「俺がしてやれるのは、これ位ですから」 「?」 「ぃぇ、‥何でもないです」 前へ |次へ |
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