《MUMEI》 「日向が買って来てくれたから」 「そう、少しでも食べられたなら良かったわ」 佳代子さんは笑って、 「ありがとう」 そう、 俺に言ってくれた。 佳代子さんは、 まだ20代にも関わらず── かなり腕の立つ、 ベテラン看護師だ。 その佳代子さんですら、 那加には歯が立たない事がある。 俺が那加にとって、 心を許してくれる数少ない存在だと知っているから、 佳代子さんは俺を頼りにしてくれている。 「ごめん、あの──‥日向君からも勧めてみてくれる? 大変じゃなかったら──」 「はい、分かりました」 そう答えたら、 佳代子さんは安心したらしかった。 前へ |次へ |
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