《MUMEI》
学祭実行委員
 朝のホームルームの後、担任に呼ばれたエリナは、文化祭の委員をやってくれないかと頼まれた。

「わたしがですか?」

「他の奴に言ってもどうせやらないだろ。お前は去年も委員だったし。斎藤なら、みんなも納得すると思うし。な?」

……な?って。

 なんであたしが二年も続けてやらないといけないの?はっきり言って嫌だ。
教師なら、他の生徒に平等に仕事を与えろよ。

「はあ。いいですよ」

また本心とは逆の答えを返してしまった。
 ここで断っても結局はエリナに回ってくるのだろう。
なら、最初から受けてしまった方が面倒じゃなくていい。

「そうか。さすが、斎藤だ。じゃあ、頼むな」

担任は満足そうに頷いて言うと教室から出て行った。

「何?斎藤、今年も実行委員やるんだ?」

 話を聞いていた男子と、その周りにいた数人がエリナの近くに寄ってきた。

「よくやるね。エリナもさ」

「先生も他の奴にやらせればいいのにな」

その言葉に全員が頷いている。

 それならあんたがやればいい。

「まあ、適当にやるよ。去年みたいな感じで全員頼むね?」

エリナが明るく笑うと、彼らは軽く返事をして散って行った。
 その教室の後ろには、不思議そうにエリナを見ている多田がいた。

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