《MUMEI》 恥ずかしい!凄い歓声の中には、明らかに淫らなトーンも紛れている。梓は怯えた。 「きょうのお客様は狼ばっかりのようです」 会場は爆笑だが、梓にとっては笑いごとではない。 「やっぱりやめます」 「ブーブー!」 大ブーイング。梓は顔を紅潮させた。完練も一緒になってブーイング。 「やめなよ、かわいそうでしょ」光が睨む。 「じゃあ君立候補するか?」 それを言われると光は無言になるしかない。 ステージでは、怯える梓に、西島が優しく説明する。 「大丈夫。紳士的なルールを適用しますから」 「紳士的なルール?」 「浴衣の下は、何も身に付けてないってことはないですね?」 梓が笑った。キュートなスマイルに会場がざわめく。 「かわいい!」 梓は照れながら答えた。 「ちゃんと下着つけてますよ」 「じゃあですねえ。もしも下着姿にされて、今度負けたらブラを取らなきゃならない段階に来たら、女性はギブアップできます」 「本当ですか?」 「そしたらゲームオーバー」 梓は少し安心したようだ。しなやかな体の動きに、危ない男たちはすでに興奮していた。 「でも下着姿は恥ずかしいですよ」梓がはにかむ。 「旅の恥はかき捨てって言うでしょ」 西島の口車に乗せられ、会場の雰囲気にも呑まれてしまったのか、梓はこんな危険なゲームを受けてしまった。 「それでは行きます!」 ミュージックが流れる。坂本がサイコロをふる。5だ。大歓声。梓もふる。2! 「嘘!」梓は悔しがった。 会場は沸きっ放しだ。 「さあ、どうします?」 「スリッパ」 「ブーブー!」 梓はびっくりして会場を見た。西島が皆をなだめる。 「あ、せ、ら、な、い」 笑いが起こる。 梓は裸足になった。それだけでも色香が増す。持って生まれた色っぽさだ。 再び音楽。坂本は2。梓は歓喜した。勝つチャンス。サイコロをふった。何と1! 梓は思わずのけぞった。 「何で!」 会場は大拍手。 「サイコロに細工してない?」 梓が言うと西島が脅した。 「イチャモンつけたら全裸だよ」 「ごめんなさい!」 慌てて謝るしぐさがわかいくて、会場はオーバーヒートだ。 「さあ、梓チャン。どうする?」 「帯を」 「ブーブー!」 「何で!」梓は少し怒った。 帯を取った梓は、浴衣の前がはだけないように、しっかり掴んだ。 音楽。坂本は3。微妙な数字。梓は、6! 「やったあ!」 梓は飛び上がって喜んだ。 坂本はビールを西島に注がれて一気飲み。 「坂本さん。男の場合、酔い潰れて負けたらブーイングじゃ済まないからね」 「大丈夫です」坂本は笑った。 また梓が指摘する。 「それ、ノンアルコールとかじゃないですよね?」 「あ、またイチャモン?」 「イチャモンじゃないですよ、質問ですよ!」梓は赤面しながら慌てて弁解した。 「イカサマはやらないから」 「ごめんなさい」 西島はグラスにビールを注いだ。 「梓チャン飲んでみな」 梓はひと口飲んだ。 「ビールでしょ?」 「はい、ごめんなさい」 素直に謝る梓が好感度抜群。西島は調子に乗って、梓が口をつけたグラスをかざした。 「飲みたい人?」 「はい、はい!」 男が一斉に手を上げる。 「浅ましい」光は心底呆れた。 完練はさすがに手を上げなかった。光に嫌われたら意味がない。 「いただきます!」 西島が一気飲みしてしまった。 「テメー!」 大ブーイング。 「お、こ、ら、な、い」 「キャハハハ!」なぜか梓が笑った。 ゲーム続行。 坂本がふる。5。大歓声。梓は、3! 梓は心底困り果てた。もう脱ぐのは浴衣しかない。浴衣を脱げば下着姿を狼の前に晒すことになる。 「悔しい!」 「悔しかったら勝つしかないですよ」 梓は唇を噛んで躊躇していたが、潔く浴衣を脱ぎ捨てた。 セクシーな薄紫のブラとショーツに、会場は危険な空気に包まれた。 「恥ずかしい!」 梓は白い歯を見せ、真っ赤な顔で恥ずかしがる。 前へ |次へ |
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