《MUMEI》

『貴方、どれだけ支離滅裂で勝手な事言ってるか解かってますか?』



『………』



『…−違う、惇は…、あいつは不器用で弱虫で寂しがりやで…


得意な事なんてちょっと料理が上手いだけで…、
もし本当になんでもこなせて大人の顔を見せられる奴だったんだとしたら、



貴方に記憶ごと…そんな事まで失くされたんだ。


…あいつは……、心の病気に苦しんで今とんでもない目にあっている……、



それは拓海さんも一緒だ。



惇に顔似てるなって想ったけど、顔だけじゃなかった…

表情…

惇と同じトラウマ抱えた頼りない目つきが一緒だったんだ』







『……刺された傷はたいしたことありませんから…、少しズレてたら神経にいってたらしいけど…


もう、忘れます




惇と、拓海さんの為に……


けして貴方の為じゃない…』





『…拓海さんはきっと貴方を愛している、そんなにも自分の事しか考えられない身勝手で酷い貴方を……



始めから何のこだわりもなく素直に拓海さんを愛してたらこんなややこしい事にはならなかったのに





惇は貴方に振り回されて本当の事も嘘の事もごちゃごちゃになって、心がボロボロになって…、それでも惇はここまで頑張ってきた



本当の両親じゃない?……冗談じゃない


たかがそんな事で捻くれられたんじゃキリがない、世の中みんな何かしら背負って苦しんで、だけどそれぞれ頑張ってんだよ。






惇は上京してから仕事もろくになくて、生活も大変だったけど弱音なんかちっとも聞いた事なかった、
始めの上京の目的は貴方達と関わりを絶つ事だったかもしれないけど、でも今の仕事…きっとやり甲斐感じてやってみようって決めたんだと思う。



いっつも下手くそな冗談言って、引き攣った笑顔作ってあいつは頑張ってきたんだよ……

……もう、あいつを振りまわさないでくれ、



拓海さんの事解決するまでは惇に……




会わないで下さい





……お願いします…』



『それと……



惇は本当は記憶消してないと思います、


ただ、貴方達が傷つかない様に忘れてる振りをしているだけ…
自分の心が壊れないように貴方の適当な嘘を無理矢理鵜呑みしてるだけだと俺は思います…


それを証拠にあいつ……、ちょっと前に…、自分は妊娠してるかもしんねーなんてマジで騒いで…
産婦人科まで行ったんですよ。
覚えてますか?
貴方、惇に男は背中で妊娠するだなんて冗談言った事あるでしょう


あれ…マジで信じてましたよ……



多分拓海さんも貴方と自分を守る為に…貴方の話信じきってるんでしょう…


それを証拠に…

拓海さんは貴方の嘘に躍らされて、仁さんは惇に惚れていると勘違いし続けて、長年むやみに惇を傷つけてしまった…』

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