《MUMEI》
残酷な正直さ











「加藤君どうだった」




「ん、…、意識戻った……、今はまた寝ちゃったけど…」





「そっか……、まあ、良かった……」





秀幸は深く長椅子に座り直し天井を見つめだした。







テーブルに封の開いた缶コーヒーが三本。






20分も経たないで俺は戻ってきたのに秀幸はその間落ちつかない想いだったのだろう。






いつもの秀幸なら一時間かけて一本を飲むコーヒー。







立て続けに飲むと胃が痛くなるから絶対普段はそんな飲み方しないのに。








病院に向かう途中秀幸から電話があって惇が倒れた事を告げると、秀幸も当然のように駆け付けてくれたのだ。






俺よりも秀幸の方が先に着いて病院の入口で待っていてくれた。


酷い寝癖のままで、おかしな柄のジャージを着たままで。







秀幸は俺の為になんでもしてくれる。




秀幸は俺の全てだ。



秀幸にとって俺は……


秀幸の全てだ。







俺は秀幸に愛されている。






俺も愛している。








なのに俺は今から










秀幸に別れを告げようとしている。














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