《MUMEI》

よくよく考えてみたら、

朝からほとんど何も食べてない。





「ちょっとだけもらうか──」





音を立てないように、

そっ、

と土鍋の蓋を取る。





美味しそうな、

雑炊の匂い。





少しだけよそって、

口に入れる。





「───────」





──美味しい‥。





「日向?」

「ぅわっ‥」





どうやら、

姫がお目覚めらしい。





「ん? 何してるの、日向?」

「ぇ、ぁ‥味見を‥」

「味見‥?」





まだ寝ぼけ眼で、

那加は俺の手元を覗き込む。





‥それから。





ぱっくりと口を、

大きく開けた。

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