《MUMEI》 征服完練は梓に言い聞かせた。 「いいかい。君がさくらとなると、違法性はほとんどない。西島さんも卑猥なショーはもうやめると言っている。実は市民から怪しいショーをやめさせてほしいと市役所に通報があったんだ」 「市役所?」 西島と梓は同時に聞いた。 「そう。幸い警察はタッチしていない。我々は市役所から潜入捜査を依頼されて来ただけだ」 「で、何て報告するつもりだ?」西島が聞いた。 「あのトランプは人をバカにしていると報告する」 「本当か?」 「オレも彼女も刑事じゃない。そもそも犯罪がないなら退散するまでだ。ただし、下着を下ろしたら、立派に犯罪行為になる」 梓は暫く動かなかったが、光のショーツから手を放すと、浴衣をきちっと合わせ、帯を締めた。 「ごめんなさい」 「いえ」 梓は手枷足枷をほどいた。光は走って完練の背中に回った。 「これにて一件落着!」 「本当だろうなあ?」 「本当だ」 完練は光の手を引いて部屋に戻った。 「熱くなり過ぎだよ光」 光はムッとした。 「完練さんは、あの梓って子が気に入ったから、許したんでしょ」 「バッファローじゃなかったバーロー。ルックスで決める私立探偵がどこにいる?」 「ここにいます」光は完練の顔に指を差した。 「何でもかんでも警察に突き出せばいいってもんじゃねえよ」 「わかってるわよ」 光は布団を二つ敷いた。 「あああ、疲れた!」 うつ伏せに寝る光。浴衣の下からふくらはぎと足首が見える。 そのまま仰向けになる。浴衣がやや乱れた。完練は容赦なく上に乗った。 「待って完練さん!」 光は本気で慌てた。しかし完練は光の両腕を押さえつけた。光は赤面しながら暴れた。 「違うの、違うんだって!」 「今のは挑発だろう?」 「違うよ、一旦待って、話を聞いて」 「かわいい!」 完練は両手を放すと、帯を掴んだ。光は完練の手首を掴んで防御する。 「冗談でしょ?」 「本気だよ」 「待ってください、お願いですから」 「かわいい!」 光は深呼吸すると、優しい眼差しで完練を見つめた。 「あたしをどうするつもり?」 「征服したい」 「何もしないって約束しなかったっけ?」 「浴衣姿で仰向けに寝たら、どうぞってことだよ」 「それは認めます、ごめんなさい。でも誤解だから。そういうつもりで寝たわけじゃないから」 光の必死さも完練には通じていない。 「誤解というなら、じゃあ、今から口説くよ」 「え?」 「光。抱きたい」 そんなストレートな。 光は抵抗した。 「あたし、恋人としかしないから」 「恋人いるの?」 嘘はつけない。 「いないよ」 完練は迷ったが、言った。 「気づいていると思うけど、光のこと、本気で好きだから。付き合いたい」 OKしたら征服されてしまう。まだ心の準備ができていない。 「あたし一筋じゃない彼氏はやだ」 光が真剣な表情で完練を直視した。 「オレは光一筋だよ」 「よく言うよ。しおりさん、しおりさん、明枝チャン、明枝チャン、梓、梓」 「何で知ってんの?」 「キャハハハ!」 光は笑い転げた。否定すると思ったら認めてどうするのか。 「完練さん。少し考えさせて。たぶんいい返事ができると思うから」 「マジか!」完練は目を丸くした。 「うん…」 「わかった、この場しのぎだ?」 「違うよ」 「征服されないために」 「そんな簡単に征服されてたまりますか」 「そういう生意気言うとねえ、裸にしちゃうよ」 いきなり襲いかかる。 「キャア!」 冗談かと思ったら本当に浴衣の帯を取られ、浴衣を脱がされてしまった。 下着姿で押さえ込まれた。生きた心地がしない。 「ちょっと、だれが触っていいって言った?」 「触らせて」 「ダメ!」 そのとき、完練のケータイが振動した。 「何だよ、どうせ部長だろ」 「出ないとまずいよ」 光に言われ、完練は仕方なく出た。 「はい…今部屋です…今から?」 前へ |次へ |
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