《MUMEI》

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8年前…初夏…



若葉の緑が映える頃、刑務所の重い鉄の扉が閉まり、加奈子は1年半ぶりに塀の外へ出た…。



加奈子は赤茶けた扉の前で佇んだまま、一つ溜め息を洩らす。



これからどう生活してゆけばよいのか……先立つものも行く宛ても無い…。



軽い鞄一つを手に下げ、先の見えない不安に途方に暮れる。



あるのは、この身ひとつ…



また身体を売って当面の生活の糧にしようか…。




…そんな考えが頭をよぎった時だった…。

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