《MUMEI》

那加が目を覚ましたのは、

もう夕陽が沈みかけた頃だった。





「‥また寝ちゃった‥」





雑炊を平らげた後、

俺と散歩に行きたかったらしい。





その時間帯なら、

あまり人に出くわさずに済むから。





那加は、

人を恐がっている。





それは、

過去に受けた──

深い傷のせいだ。





「日向ってばッ」

「?」





横を見たら、

那加が思いっきり膨れっ面をしていた。





たぶん、

何回も呼び掛けたんだろう。





それなのに返事が返ってこないもんだから、

機嫌を損ねたみたいだ。

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